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其の中の真実3
「み〜んな、なんて美味しそうで可愛いんだろ♪ やっぱり今日ここ来て正解☆」
チョコにチーズにタルトにパイ。トレイいっぱいに乗せられたケーキを前に、快斗は瞳をキラ
キラさせて、うっとりとしていた。
その快斗の正面には、小さめのカップに入ったコーヒーゼリー、1つだけをトレイに乗せ、複
雑な顔をしているコナンが座っていた。
小さなコーヒーゼリーとコナンに、快斗が首を傾げる。
「・・・コナン、それだけしか食べないの?」
「後でまた取りに行くよ。朝ごはん食べてから、あんまり時間経ってないから、いまちょっとお
腹がいっぱいなんだ。」
あはは、と笑うコナンの顔は明らかに誤魔化し風味だ。それに、朝ごはんと言っても、今日の
目的地を知っていた蘭は、パンと牛乳といった軽いものしか、コナンに出していなかったのを、
快斗は覚えている。
「甘いもの苦手だった?」
「そ、そんなことないよ!」
慌てて否定するコナンだったが、その慌てぶりが逆に怪しい。「むー」と少し考えて、快斗は自
分のトレイに置かれた、甘さ控えめのチーズケーキに視線を移す。
「ここのは本当に美味しいんだから、食べてみてよ。・・・ほら☆」
「え?」
コナンの前に、スッ・・・と、チーズケーキが現われた。快斗が一口分をフォークでとり、コナン
の口元に差し出したのだ。ほらほら、と「はい、あ〜ん♪」状態で快斗が誘う。この状況は・・・
「・・・美味しい。」
思わず、ケーキを食べる前から出そうになった言葉を、かろうじて一時的に飲み込み、ゆっく
りゆっくりと状況と味を楽しんでから、二重の意味をのせて、やっと言う。
「でしょう!?」
一方の意味には気づいてもいない様子で無邪気に喜んた快斗が、ガタンッと椅子から立ち
上がった。
「ちょっと待ってて。すぐ戻るから!」
「あ、か・・・」
「快斗兄ちゃん」と続く言葉を、コナンは慌てて飲み込んだ。今日、何度目かのこと。上機嫌で
去っていく背中を呼び止める言葉を持たずに、ぼんやりと見送る。
脳裏ではまた、怪盗が笑っていた。
「は〜い、お待ちどおさま♪」
言葉どおりに、すぐに戻ってきた快斗の笑顔に、コナンはホッと胸を撫で下ろす。
「・・・なんか、ご機嫌だね?」
「うん! コナンとケーキ食べれて嬉しいから♪」
(こんなに嬉しそうな顔が見れるなら、ケーキくらい店ごと買ってやるのに。小さくなってさえな
ければ・・・だけど。)
さすがに小学生の姿でそれをやるのは怪しがられるし・・・と、コナンはどこかずれた思考で
悔しがる。
「それに、これはコナンの奢りだし☆」
「え!?」
コナンの野望が伝わったのか、快斗がさらりと言ったものだから、コナンは目を見開いた。そ
れを別な意味で解釈した快斗が、手をパタパタと振って言う。
「あ、心配しなくていいよ。コナンの分は、こっちで出すから。」
(なんだ、そういうことか。)
「・・・でもそれってワリカンって言わない?」
「違う。誕生日ケーキのプレゼント。」
(は?)
とんでもない情報を、突然に得てしまった気がした。
「・・・えっと、か」
とにかく、確かめなければと思い言葉を紡ごうとしたが、「快斗兄ちゃんのお誕生日」と言おう
として、またつまずいてしまった。快斗はただ、にっこりと笑ってコナンの言葉を待っている。
「・・・お誕生日、だったの? 今日?」
「今日じゃないよ。6月21日。で、コナンは5月4日でしょ?5月は特に何もできなかったか
ら、今日はお互いにケーキをご馳走し合う、ってことで・・・我ながら、結構いい考えじゃない?」
6月21日。今日よりも、かなり前の日付。
(何てこった!)
「もっと早く言ってよ! そういうことは!!」
ガタンッと椅子から身を乗り出させ、店の迷惑にならない程度に、コナンが声を出す。顔は真
っ赤だった。
「コナン?」
「言ってくれれば、ちゃんと色々準備できたのに・・・!」
自分は何という失態をしてしまったのか。好きな人の誕生日を調べることを忘れ、さらに誕生
日を大分過ぎてから、当の本人から知らされたのだ。しかも、相手の方は自分の誕生日をしっ
かり把握し、今日のことを考えてくれていた。コナンにとってそれは許しがたく、自分で自分が
恥ずかしい。
「や、でもコナンに祝ってもらうなら、今日この店で、って決めてたし。当日は家でおふくろとケ
ーキ食べたし、他の休日にも青子とかクラスの連中とか、あ、あと白馬もケーキご馳走してくれ
るって言うから」
「白馬!?・・・の兄ちゃんが?」
何故、白馬が快斗の誕生日を祝うのか。滅多に日本には居ないと言っていたのに。そして何
故、快斗はクラスの友達と白馬を分けて言うのか。しかも快斗の言い方だと、どうやらクラスの
友達とは別の日に、白馬と二人でケーキを食べたようだが。
白馬の名前が出たことで、別な方面でもコナンの頭はがグルグルとまわりだし、コナンはなん
だか色々忙しい。
「うん。白馬ん家のパティシエさんがケーキ作ってくれて。・・・で、結局今日まではコナンに会
えそうになかったから、丁度良かったなと思って。あ、でもその分、コナンの誕生日からも間が
空いちゃったのは・・・ごめんね。」
「え、いいよ、それは!」
コナンを気遣って頭を下げる快斗に、コナンは慌てて思考の中心を快斗に戻す。快斗が可
愛らしく、しかも自分のことを気遣って謝ってくれているのに、白馬のことを考えている場合では
ない。当然、白馬より、快斗だ。快斗に頭を下げさせるだなんて、とんでもない。
コナンとしては、ここは何としても挽回したかった。難事件をも簡単に解いてしまう頭脳でもっ
て、真剣に考える。
「・・・プレゼント。」
「え?」
真剣に考えたが、誕生日と言えば、これ以外の他に挽回できそうなものが浮かばなかった。
「何が欲しい? 何でも言って。」
「え、だから、今日のケーキ・・・」
「それは誕生日ケーキでしょ? そうじゃなくて、誕生日プレゼント。誕生日には、ケーキの他
にも、プレゼントがつきものでしょう? 今日すぐには用意できないかも知れないけど、絶対に
期待に応えるから、何でも欲しいものを言って。」
・・・真剣に語るコナンの瞳が、蒼く深い輝きをもって快斗を見つめたので、快斗は一瞬、その
瞳の色に、見惚れてしまった。



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