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其の中の真実2
ざわざわと、周りの空気が騒がしい。自分たちへと注がれる、視線がうるさい。・・・ケーキバ
イキングのホテルへと向かいながら、つないだ手の先にある存在に目をやって、コナンは、朝
から数えて何度目になるかもわからないほどの、ため息をついた。
快斗がコナンに会いに、毛利探偵事務所まで来たのは今日が初めてのことで、驚きと嬉しさ
のあまりパジャマから着替えるのも忘れて、寝起きで血がまわりきれていない体で、転びそうに
なりながらも快斗の待つ階下へと降りた。けれど、そこに居たのはどう見ても、陽光の下で健
康的に笑いはしゃぐのが好きな、男子高校生の快斗ではなく、白い肌を太陽と人目にさらすの
を恥らうように木陰の下で微笑んでいるのが似合っていそうな、少女だった。
(そんで、これがまた周囲の視線を集めるほどの可愛さだ、と・・・)
コナンは初めて快斗に会ったときのことを思い出す。江古田高校の学園祭。参加者全員を
巻き込んでの壮大な鬼ごっこで、鬼たちの手から逃れるために女装して身を隠していた。江古
田高校のセーラー服がよく似合っていた。それはもう可愛かった。
(これはやっぱり、やり慣れてるよな。)
コナンにとって、これは由々しき事態だ。自分の目の届かないところで、いつ新たな虫がつい
てしまうか知れない。なんとしても止めさせなければ。
まずは本人に、慣れているかどうかの事実確認を・・・と、快斗に声をかけようとして、はたと
気づく。
(・・・なんて呼べばいいんだ・・・?)
まさか少女の姿の快斗に「快斗兄ちゃん」と呼びかけるわけにもいかず、コナンは少し考え
る。考えて、また気づく。いまだけでは、なかった。このもどかしさを感じたのは。
快斗を呼ぶとき、快斗と話すとき・・・「快斗兄ちゃん」と声に出すとき。コナンはいつでも、喉
に小さなトゲがささったような、わずかな引っかかりを感じていた。
―――――本当は、そう呼びたいのではないからだ。
脳裏に、怪盗の姿が甦る。あれは、吐く息がすぐに白くなるような、寒い夜だった。警察を撒
いた後、怪盗は少しも疲れた様子など見せずに、コナンを前にして笑ったのだ。余裕の態で。
『へぇ? 本当はそう呼びたいんだ?』
(・・・・・・・・・うっせぇよ・・・!)
呼びたい。
「快斗」と。
呼びたいのに呼べないもどかしさと、あの時の・・・怪盗が自分をからかう声が癪に障って、思
わず、コナンは体に力が入る。つないだ手にもそれは同じで、快斗にも気づかれてしまった。
「どうしたの、コナン?」
「あ・・・。」
「ん?」
やはり、いまの姿の快斗を「快斗兄ちゃん」と呼ぶわけにもいかず、つないだ手にぐっと力を
込めて、声には出さずに快斗を呼ぶ。快斗も察したのか、コナンが小声で話せるように腰を折
り、その顔をコナンの近くまで寄せた。
(うわ、近ぇ!)
すぐ近くに来た長いまつげにドキドキしながら、それでもやっと快斗と話せることがコナンには
嬉しかった。
「・・・快斗兄ちゃん、実は手品の他にも、女の人の格好するのも趣味なんじゃないの?」
「んー・・・。まあ、実は割と、普段からやってる。」
(・・・やっぱり。)
「そんな目で見ないの! 結構、便利なんだよ。今日みたいな割引とか、映画のレディースデ
イのときとか。そりゃ小学生に比べれば、自由につかえるお金は多いけどさ。節約できるときに
はしなきゃ。」
「なんかセコイ。」
「いいの!」
ふーんだ、と顔を離していく快斗を見て、コナンは焦る。やっぱり可愛い。いまの快斗のしぐさ
を見て、周りの男が数人、頬を赤らめたのを見逃さなかった。
「で、でも男の人にしつこく声かけられて、困ったことになっちゃったり・・・しないの?」
「や、声かけられることは・・・あるけど。」
(やっぱりかよ!)
「でも、別にこっちが反応返さなければ、結構あっさり諦めるよ?」
(それは・・・周りにいる他の男たちの視線が、きつくなるからじゃないか?)
いつか諦めの悪い男が出る前に、やはりなんとしても止めさせなければ・・・と、コナンはまた
溜め息をついたのだった。


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