出会っちゃった人たち4




 その時。 

 「あ・・・・・・」 

 聞き逃してしまいそうなほど小さな声だったけど、蘭の口から出たそれを、俺は確かに聞い
た。 

 「新一君!?」 

 園子の声に、すぐにかき消されちまったけど。
 




 目の前で、園子が騒いでる。 
 なんでここにいるの、とか。 どうして連絡の一つもよこさないのよ、とか。 
 言われている方の二人は、傍目から見ても戸惑ってるのがわかる。 そりゃそうだろう・・・・・
工藤新一は、俺なんだから。 
 に、しても。 
 似てるか?俺に?そいつが? 俺はあんなに子どもっぽい顔してねえぞ。 
 蘭も、あいつを俺だと思ってるのかな、と思って蘭を見ると、蘭は小さく口を開けたまま、何か
を考えているようで、どこかぼんやりとしていた。 

 「蘭姉ちゃ」 
 「違いますよ。」 

 俺が蘭の意識を呼び戻そうと、蘭を呼ぼうとした時、白馬が動いた。 

 「失礼。もしあなたが、彼を工藤新一君だと思っているのなら、それは残念ながら人違いで
す。彼は黒羽快斗君。こちらの中森青子さんと同じく、僕のクラスメートです。」 

 白馬が穏やかながらも、さっきよりは少しだけ強い口調で、園子と二人の間に入る。 

 「え?そうなの?・・・やだ。ごめんなさい。あたし、てっきり新一君だと思って・・・。鈴木園子
よ。本当にごめんなさい。」 

 園子が顔を真っ赤にして謝った。 その園子に、青子という子が明るく笑って言う。 

 「大丈夫!気にしてないよね?快斗は。よく間違われてるもん。ね?」 
 「まあね。でも本当に気にしないでよ。ようこそ江古田へ♪園子ちゃんと、ええと・・・」 

 青子という子には憮然とした顔で、園子には人好きするような明るい笑顔で言って、黒羽とい
うやつがこっちを見た時。 

 「・・・やっぱり・・・そうだったんだ。」 

 ―――――蘭?・・・・・何がだ?

  蘭の口から漏れ出た言葉は、黒羽が俺じゃないと気づいていた、というより、何か他に思うと
ころがあったかのようにも感じられて。 
 俺はそれがなんなのか聞きたかったが、すぐに蘭は明るく笑って、二人に挨拶を始めた。 

 「こんにちは!毛利蘭です。この子は、一緒に住んでる江戸川コナン君。」 
 「あ、こ、こんにちは。僕・・・」 

 慌てて子どもらしい挨拶をしようとしたんだけど。 

 「「あーーーーーっ!もしかしてキッドキラー!?」」 

 青子さんと黒羽の声が綺麗に重なった。 

 

 

 「じゃ、もしかして蘭ちゃんのお父さんって眠りの小五郎!?わあ♪青子のお父さん、二課に
いるの!」 
 「え、中森警部のこと?すごい偶然!うちのお父さんがお世話になっちゃって。」 
 「うぅん。こっちこそ。ごめんね、お父さん、蘭ちゃんのお父さんが現場に行くと、愛想悪いでし
ょ?お父さんったら探偵さん達にはいっつもそうなの。気にしないでもらえると嬉しいんだけ 
ど・・・」 

 おいおい、なんなんだ、この展開は? 
 急激に仲良くなり始めてねぇか、この二人。 
 女の子ってすげー・・・と思ってたら、黒羽が俺をじーっと見てるのに気づいた。 
 青子さんもそれに気づいたらしくて、「こらバ快斗!」って言って黒羽が俺をじと目で見てるの
を止めさせた。 

 「いっくら快斗がキッドファンで、コナン君がキッドキラーって呼ばれてるのが面白くないってい
ったって、そーんな風に睨んだらコナン君が怖がるでしょー?もう、大人げないんだからぁ。」 

 へえ、こいつキッドファンなのか。物好きな。 

 「べつに、睨んでねーよ。」 

 けどやっぱり面白くはねえんだろうな。 
 顔に出やすい奴だ。 やっぱり俺とは似てねえじゃん。 

 「あら、黒羽君もキッド様のファンなの?」 

 園子が嬉しそうに言う。 それに黒羽が「へへ」と照れたように笑って、言った。 

 「そ!俺もマジシャンだからね。憧れなんだ♪」 

 そう言って、黒羽が園子と蘭にバラの花を差し出した。 ・・・すげえ。どっから出したか全っ然
わからなかった。 
 俺より黒羽の手が近かった蘭も、園子も、やっぱりわからなかったみたいだ。 
 と、突然俺の視界に、チョコやキャンディが現れた。 

 「悪かったな、ぼうず。これはお詫びのしるし♪」 

 そう言って今度は屈託のない笑顔を見せる黒羽に、一瞬。ほんの一瞬。 
 俺の感覚が全部持ってかれたような気がした。