おねがいサンタ3




 「快斗?」 

 あ、ちゃんと気絶してるわね。よしよし♪大人しく寝ない子には、やっぱりこれよね。睡眠薬な
んて使うより、ずっと安全で確実ですもの♪ 
 
 (さて、と。) 
  
 「それではどうぞ、お入りくださいな。」 

 窓の外に向かって声をかける。冷たい空気と一緒に、とても暖かい笑みを浮かべた老人が
入ってきた。 

 「HO―HO―HO―!メリークリスマス!奥さん。」 

 その人が纏うのは、赤。上着もズボンも帽子まで。そして帽子の下には、目のほとんどを隠し
てしまっている、長くて白い眉毛に、口元から胸までの、同じく白くて長い髭。何処からどう見て
も、完璧なサンタさん。・・・相変わらずのこだわりようなんだから。 

 「今年も会えて嬉しいですわ、サンタさん。さ、あなたからのプレゼントを待ってる子がいま
す。でも恥ずかしながら、今年もお行儀が悪くてこんなところで寝ちゃったんです。申し訳ありま
せんが、今年もまたベッドまで運んであげてくださらない?」 
 「…今年も?」 
 「今年も。」 

 にっこりと。この人にはいつだって最高の笑顔を見せたい。 

 「やれやれ。容赦のない方だ。今年はなんの魚を使ったんですかな?」 
 「ブリです。明日、中森さんのお宅に持っていって、警部にさばいてもらいます。その後、青子
ちゃんとブリ大根にするんですの。」 
 「ああ、それはいい。おいしそうですね。ところで奥さん。」 
 「はい?」 
 「息子さんを抱き上げるには、わたしのこのどて腹が少々邪魔でして。姿を変えても宜しいで
すかな?」 

 実はこの辺の会話は、毎年の決まりごと。 

 「どうぞ。わたしにお手伝いできることは?」 
 「それでは。どうか目をお閉じください。」 

 言われるとおりに目を閉じる。これも、決まりごと。お待たせしました、と言われ、頬に感じた
のは、あの人の唇。 

 「…盗一さん。」 

 わたしの最愛の人。 





 「よっ、と…。大きくなったなぁ。」 
  
 快斗を愛しげに見る、その瞳が好き。 

 「いい子に育ってるでしょ?」 
 「ああ、本当に。」 

 盗一さんの先を歩いて、部屋のドアを開けていく。盗一さんたら、本当に嬉しそう。年に一度
ですもんね。こうして、しっかり快斗に触れるのは。快斗の部屋に着いて、ベッドに快斗を寝か
せる。それから、最後の仕上げとばかりに快斗の額にキスを贈った。盗一さんとわたしと、二
人で。 
 おやすみなさい、快斗。わたしたちの愛しい子。 

 「…あのクマがいるね。」 

 内緒話をするときより小さな声で、話す。 

 「ええ。あなたのパネルの向こうで見つけたみたい。快斗、嬉しそうだったわ。」 
 「大人げないことをしてしまったなぁ。」 
 「いいんじゃない?愛嬌のある父親で。」 

 そりゃ、あの時は怒ったけど。 

 「去年はナットクラッカーで、その前は金平糖。今年は何を?」 
 「ん。スリッパをね。」 
 「…それを、あなたを狙う組織の連中に快斗が投げて、あなたが元の姿に戻れるといいわ
ね。」 
 「さすが。わたしの考えを良くわかってくださる。」 
 「工藤さんのところの新一君も、それで元に戻れたりして。」 

 あ、ちょっと眉間に皺。もう。それじゃクマの時と 同じよ? 

 「組織の次は新一君とやりあうことになるのかな。」 
 「かもね?快斗も新一君のことを結構気に入ってるみたいよ。靴下、編んであげてたし。」 
 「それを受け取った時の新一君の顔は見たかったな。」 

 「ん…。」 

 あらやだ。いつの間にか声が大きくなってたみたい。盗一さんが頭をなでると、すぐにまた落
ち着いた寝息になったけど。 

 「さて、リビングに戻ろうか。」 
 「わたしへのプレゼントは何かしら?」 
 「それは見てのお楽しみ。気に入ってくれるといいけど。」 
 「あなたからのものを、わたしが気に入らないはずないわ。」 

  



 こうして、黒羽家のイブは過ぎていく。わたしたちにとって、それは魔法のような一日。