白い息が呼んでる1




 ―――ダカダカダカダカ! 

 ものすごい人数の足音に混じって、聞きなれた声が呼んでる。 

 「待たんか、キッド!!今日という今日こそ、お縄をくれてやる!」 

 息を切らしながら顔を真っ赤にして言っちゃって♪ 警部ったら相変わらず可愛い人だよな
あ。 

 「嫌です。欲しくありません、そんなもの。中森警部の愛が込められた指輪なら欲しいけど
♪」 

 俺だって警察の皆さん同様、階段を駆けあがりながら言ってるんだけど、そこはほら、天下
の怪盗紳士ですから。 言葉を切らせることもなく、すらすらと言ってやる。 
 ちょうど目当ての屋上に着いたところでもあったから、にっこり笑って愛情込めた投げキスも
贈っちゃう。 

 「こ、こ、この…っ!人を馬鹿にするのも大概にしろ!!」 

 あ、ひどい。 
 なにも、さっきよりも顔を真っ赤に、それこそ茹で蛸みたいにさせて、怒らなくても。 

 「馬鹿になんてしていませんよ。それどころか、警部には感謝しているんです。」 
 「感謝だと?」 
 「ええ。先日の、花鳥風月。」 
 「む?」 
 「わたしが、人の命だけは盗らないと断言してくれたでしょう?」 

 そう。 
 あれは本当に嬉しかったんだ。 変装中なのも構わず、抱きついちゃいたくなったくらい。 
 それに、8年ものブランクなんてものともせず、警部はキッドを追い続けてくれてる。 8年間、
キッドの生存を信じて、待っててくれた。 
 なあ、親父。 親父だって嬉しいよな? 
 もちろん、それだけじゃなくて。 
 青子の前じゃ言えないけど、親父が居なくなってから、父親のように接してくれた警部を、俺
は本当に大好きなんだ。 

 「嬉しかったですよ、本当に。ありがとうございました。」 

 右手を胸の前に持ってきて、左手は腰の後ろに。 軽く腰を折って一礼すると、警部は照れた
のか、軽くそっぽを向いて面白くなさそうな顔をして、指で頬をかいてた。 
 ああ本当に、可愛い人だなあ♪ 
 本当ならもう少しだけ、警部とここで遊んでいたかったんだけど、さっきから物陰に潜んでる
気配が気になるから。 
 警部には、退場してもらわないと、ね♪ 

 「あ、こら!待たんかキッド!!」 

 屋上から飛ばしたダミーに悔しそうに叫んでから、警部は来た道を戻っていっちゃった。 

 ―――ダカダカダカダカ! 

 他の皆さんも、警部の後を追って、階段を降りていく。 
 ごめんね。 せっかく登ったのにね。 

 「・・・さぁて、と?」 

 でもほら、他にもお客さんが居たらさ、お相手しないわけにはいかないでしょ? 

 「見つかると怖い大人はもう居ないぜ?だから出てきたら?」 

 ったく! 
 俺がこの前公園で同じことしたら怒ったくせに。 
 お前がそれで風邪でもひいたら、黒羽快斗のせいでも怪盗キッドのせいでも、蘭ちゃんに怒
られるのが俺ってことに変わりはないんだぞ! 

 「なあ、名探偵?」