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出会っちゃった人たち12
「あらあ、快ちゃん。それでどうしたの?」
どうにもできませんでした。
「おや、浮かない顔だね。もしかして認めちゃったのかい?」
ん〜。 何と言ったらいいものか。 グローバル夫婦を前に、言葉に迷う。
ちなみにここは、米花グランドホテルの最上階、ロイヤルスイートルームだったりして。 久し
ぶりに帰国した優作さんと有希子さんにお呼ばれして、一緒に夕飯を食べている。
もちろん、名探偵には内緒のお食事会だ。
「キッドが快ちゃんの顔を利用して・・・ていうのは、蘭ちゃんには通用しなかったの?」
「それは、言ったんですけど・・・。」
『でも、黒羽君。風邪ひいてたでしょう?』
『いつの話?』
『ブラックスターの次の日。青子ちゃんにはセリザベス号を見物に行って海に落ちたって言っ
てたよね?』
『え?』
『キッドが黒羽君の行動を気に留めてるなら、黒羽君本人と鉢合わせしそうな現場で、黒羽
君の顔を使わないと思うの。』
驚いた。 本当に驚いた。
「まさか、青子と話してるすぐ後ろに、蘭ちゃんたちが居るとは思いませんでしたよ。」
「おやおや。」
「それはまた、すごい記憶力ねえ・・・。」
本当にね。
それだけ、名探偵に似ていた俺が、蘭ちゃんにとってインパクト強かった、てことなのかな
あ。
それにしても、俺、いま割と緊張しながら、蘭ちゃんにばれたことを二人に白状してるんだけ
どな。
二人とも、最初こそ驚いたみたいだったけど、なんかいまはもう平然と話してる。
さすがは親父のお友達?
「まあ彼女には、キッドのときに接触しすぎてた、てのもあるんでしょうけどね。」
苦笑しながら言う。
もしかしたら、彼女とは名探偵よりも間近で顔をあわせていたんじゃないかと思う。 セリザベ
ス号で姿を借りたときや、雪山で眠らせたとき。 さらには北海道。
しかも、話し方も割と素にしてた気がする。
「でも蘭ちゃんは気づいたのに、新ちゃんたら簡単に誤魔化されちゃうんだから。まだまだ
ね。」
ふう、と少し不満そうに有希子さんが言う。
「蘭ちゃんか。あの娘はなかなか鋭いみたいだね。」
「そうよ!女の勘はバカにできないんだから♪ 蘭ちゃんの勘には、新ちゃんも危なかったし
ね。」
ははは、実は名探偵の方も、正体ばれてんじゃねえの?
思わず乾いた笑いになっちゃうよ。
「それで?それからどうしたの?」
有希子さんに再度聞かれた。
「誰にも、言わないでいてくれる、って。」
「あら。やっぱりいい女ね、蘭ちゃんて♪」
うん。 俺もそう思う。
『キッドとして会ったときのこと考えても、わたし黒羽君のこと、絶対悪い人とは思えないし。何
か、理由があるんでしょ?』
『・・・・・。』
『あ、言わなくていいよ、もちろん。それに、コナン君や、新一やお父さんにも、黒羽君がキッ
ドだってことは絶対誰にも言わない。ただ・・・。』
『・・・ただ?』
『わたしは立場上、表立ってキッドの協力や応援をすることは、できないわ。』
『・・・うん。充分だよ。ありがとう。』
『あ、でも! 黒羽君の邪魔もしたくないのよ。それに、黒羽君には、今日みたいに元気でい
てほしいから。だから、無茶はしないでね。』
蘭ちゃんてば。
俺、正直泣きそうなほど嬉しかったよ。 青子に似た顔で言われちゃったしね。
あの後、みんなと合流した店では名探偵にべったり懐かれ、「これからも遊んで?快斗兄ち
ゃん♪」なんて言われてしまって、状況的には、かなりやばいんだろうけど。 それでも気持ちは
暖かかった。
いまみたいに、暖かくて、ふわふわと・・・・・。
「あらら。快ちゃん、寝ちゃったわ。優作、なに飲ませたの?」
「人聞きの悪いことを言うんじゃない。ああ、これだな。このチョコレートの中のブランデーに
酔ったんだろう。」
「へー。これだけでもダメなのね。可愛いわ♪ 新ちゃんとは、えらい違い。」
「有希子、そこの荷物の中にポラロイドカメラが入ってるだろう?撮ってくれ。」
「いいけど・・・快ちゃんの寝顔撮ってどうするの?わたしも欲しい!2枚撮っていい?」
「ああ、いいよ。ちょっとね、嫌がらせを兼ねて、見せてやりたい奴がいるんだ。」
「・・・まさか、新ちゃん?」
「いや、違うよ。」
俺は眠ってたから、このときの二人の会話は聞けなかった。
後になって、それこそ天地がひっくり返るような事実と共に知ることになるんだけど、このとき
はまだ、夢の中。
お祭り騒ぎのなか、祭そのものよりもっと騒がしい出会いをしたみんなと、怪盗も探偵も、警
部も活躍しないでいい、平和で楽しい旅行をしてる夢をみていた。


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