怪盗部屋3




 石を月にかざして覗き込んで、はい、はずれ。 
 
 「なーんか、な」

 思わず溜め息が出る。疲れた。
 こんな日には、あれだろ、やっぱ。 

  

 

 天窓から部屋に入って、すぐさまベッドにダイブ。 
  
 (は〜、落ち着く。) 
  
 枕に顔を沈めたら、親父の匂いがした・・・・気がする。錯覚なのはわかってるんだ。でもい
い。それだけでも嬉しいから。 
  ちょっと変態入ってるよなあ、とは自分でも思うんだけど、いいよな、どうせ月にしか見られて
ないし。 
 
 「親父もこのベッドに寝転がって、あの窓の向こうの月を見てたのかな・・・」

 ・・・あ、寝そう・・・このまま。ま、いいだろ、ちょっとぐらいなら。 

 (・・・・・・・・・・・・・いや。) 

 いま、邸の玄関から誰か入ってきた・・・気がする。
 
 「勘弁してくれよ」

 今日はこのまま寝たいんだよ。誰だ?隣の博士かお嬢さんか・・・って、この感じは。

 「なんだ」

 名探偵か。
 じゃ、俺はここから出ない方がいいな。寝転がったまま、名探偵の気配を追おう。 
  
 (・・・何しに来たんだろ・・・。)

 毛利の家の人たちは誤魔化せたのか?こんな深夜に外出なんて、中身はどうでも、見た目
は子どもにしか見えねーんだから、危ないだろうに。

 (お、2階に上がってきた)

 こっちには来るなよ、頼むから。来ないだろうけど。 

 (あー、なんか名探偵の部屋に入ったっぽいな。)
 
 ・・・・・・・・・なんか、一人になりたくなるような・・・嫌なことでも起きたのかな。
 うん、まあ。色々あるよな、めげそうな時とか、泣きたくなるようなこととか。
 探偵なんてやってれば、理不尽な事件に嫌な気持ちになることも、ままあるだろうし。自分で
決めてやってるにしたって、いまの名探偵の状況じゃ思うように動けないで、でもそうしてるうち
にも事態は進んで・・・なんて、もどかしい思いをすることもあるだろう。
 
 (俺もね、さっきまでそうだったんだよ)

 拝借したものがパンドラじゃなくって、本当に見つけられるのか自信なくなっちゃって、放っとく
と浮上できなくなりそうだったから、だからここに来たんだ。親父に甘えに来たんだよ。 
 でも、こういう時、お前は優作さんや有希子さんに国際電話をかけるのでもなく、お隣の博士
やお嬢さんのところに行くのでもなく、自分の中でやり過ごすんだな。・・・手を伸ばせば、よりか
かれる存在が、すぐ傍にあるのに。

 (でも、それって大変なんじゃないか?)

 俺にだってお袋や寺井ちゃんが居るから、まったく一人ってわけでもない。けど、あんまり俺
が頼りないと、あの二人をすごく心配させちまうから、大抵のことなら俺もこうして一人で、沈ん
だ気持ちを誤魔化すんだ。

 (・・・あ)

 何だ。俺も名探偵も、一緒じゃん。
  
 (俺とお前、思う存分弱くなれるのがここぐらいってのも、変な共通点だな名探偵?)

 ちょっと、親近感わいた。
 名探偵には悪いけど、そんなことで少しだけ元気が出た。 

 (・・・でも俺だけってのも悪いから、さ)

 お前の気持ちもすぐに回復できるよう、月と親父に祈っておいてやる。だから、早く元気にな
れ。

 「そんでまた、追いかけっこでもやろうぜ」

 ・・・な、名探偵。