パンプキン・パンチ




 「Trick or Treat !?」 
 「Treat!」 
 「おぉ♪パンプキン・パイだ!ありがと新一♪♪」 





 「でも、新一がちゃんとお菓子を用意してたなんて、ちょっと意外だな。」 

 幸せそうにパイをほおばる、魔法使い・・・の格好をした、快斗。 

 「まあな。用意しとかないと、どんなイタズラされるか、わかったもんじゃないし。」 
 「あ、ひでぇその言い方。でも、ま、いいや。美味しかったし♪」 
 「早ぇよ!もう食っちまったのかよ。ああ、ほら口元に付いてるぞ。」 

 指で快斗の口元を綺麗にして、新一は指に付いたそれを舐める。 

 「甘ぇ・・・。でも意外っていえば快斗こそ。俺はお前のことだから、てっきりキッドの衣装で来
るかと思ったけど?」 

 新一の言うとおり、今日の快斗の格好は、白い魔法使いではなくて、オーソドックスな黒い魔
法使い。 とんがり帽子に、首から足元まで覆うマントが、すっぽりと快斗の体を包んでいた。 

 「あー、俺もそのつもりだったんだけどさ。寺井ちゃんに止められた。ここ来る前に警部の家
にもお菓子もらいに行くって寺井ちゃんに言ったら、キッドの衣装は禁止されちゃった。」 

 寺井ちゃんたら泣きそうな顔するんだもん。 
 快斗の言葉に、新一は寺井の苦労が窺がわれて、思わずため息が出る。 

 「・・・・・大変だな、寺井さんも。」 
 「でも変わりに渡された衣装がこれだろー?オーソドックスすぎてつまんねえから、二段階に
した♪」 

 けけけ、と笑う快斗に、新一は嫌な予感を覚える。 

 「二段階・・・?」 
 「そ★じゃーん!」 

 ばさっ、と黒マントを脱いだ快斗の格好は。 

 「・・・・・・・・・ぶはっ!」 

 



 頭には白くて長いのが。 お尻には白くて丸いのが。 体には黒くてノースリーブのスーツのよう
なものを。 足を覆うそれが腿までの丈のスパッツであることを除けば。 
 ・・・それはまるで、カジノとかショービズの世界とかに居そうな。 ・・・・・・・・バニーさん? 

 「あれ、新一?おーい、新一〜?」 

 快斗にゆさゆさと揺すられても、新一の意識はなかなか戻ってこなかった。 





 ソファに座ってコーヒーを飲んで、ようやく気持ちを落ち着かせる。 快斗は新一の向かいのソ
ファに座って、ココアを飲んでいる。 
 バニーさんなままで。 

 (可愛い。可愛いが!) 

 「なんでそんなのにしたんだよ?」 

 低い声で快斗に聞く。 

 「親父の隠し部屋で見つけた。」 
 「盗一さんの!?」 

 まさか盗一が、それを着ていたことがあったというのか。 考えたくない可能性に、新一の頭は
クラクラしてくる。 
 それを読み取ったかのように、快斗がその可能性を否定する。 

 「違う。親父の服じゃなくて、親父が俺に用意してた服みたい。服と一緒に、『快斗17歳』って
札があった♪」 

 盗一が自分のために用意していてくれたもの、というだけで、嬉々としてそれを着たのだろ
う。 自分の格好に特に疑問も抱かず明るく話す快斗は、ものすごく可愛かった。 
 が、新一は快斗をそんな気持ちにさせているのが、自分ではないのが面白くない。 しかも、
子どものときの快斗としか一緒にいなかったのに、17歳の快斗の服を、サイズぴったりに用意
していた黒羽盗一。 

 『・・・・盗一さん。やっぱり俺の最大のライバルは貴方だ!』 

 新一は闘志を新たにしたのだった。 

 「って、おい!まさか中森警部にも、その格好・・・」 
 「うん、可愛く着れてるって頭撫でてもらった♪見せた直後は、さっきの新一みたく少し放心し
てたみたいだけど。」 
 「・・・・・。」 

 ―――――――強敵は、まだいた。